【完全版】レザーにまつわるサステナビリティの全て【メリット・デメリットを踏まえた選び方】


革素材

こんにちは、CACTUS TOKYOの熊谷です。

「色々な情報を見かけるけど、結局本革とヴィーガンレザーのどっちがいいのかわからない」

今回の記事は、そんな方の助けになるよう、私たちの持つ知見を全力でまとめました。

この記事を読めば、あなたに合った納得の選び方ができるはずです。

 

レザーにまつわるサステナビリティの全てについて、環境問題の観点を中心に本革とヴィーガンレザーの最新の状況をわかりやすく整理しつつ、徹底的に解説していきます!

 

※様々な問題を取り上げているため、文中に一部ショッキングな画像を掲載しています。ご注意ください。

 

目次

  1. 基本知識
    1. 世の中にあるレザーの種類
    2. 環境問題を一言で表すと、人類による「地球資源の使いすぎ」
    3. その本質は、多様な問題が相互に関係しあう複雑な状態
    4. レザーは、地球が限界を超えている部分全てに関わっている
    5. 一人一人が、より環境負荷の小さい選択をしていく必要がある

  2. 本革のサステナビリティ
    1. メリット
      1. 丁寧に扱えば30年もつポテンシャル
    2. デメリット
      1. 水分や擦り傷に弱く、使用可能期間が使い方に依存する
      2. 環境負荷が大きすぎる畜産業
      3. 畜産業を抜きにしても、高い環境負

  3. 人工皮革・合成皮革のサステナビリティ
    1. メリット
      1. 形状が自由自在で素材を無駄なく使える
      2. 本革と比べると製造工程がシンプルで、CO2排出量は意外と少ない
    2. デメリット
      1. 地中に埋まっていた石油(CO2)を、新たに地上に放出してしまう
      2. 最大の問題は、製品寿命が短い傾向にあること

  4. 植物由来レザーのサステナビリティ
    1. メリット
      1. 植物は生産過程の環境負荷が小さい。そもそも副産物を使うケースも
      2. 光合成により地表のCO2を回収する効果がある
      3. 農法によっては、土壌の回復効果がある
    2. デメリット
      1. 新しい素材であり、公開されている情報が少ない
      2. 耐久性が素材によって異なる

  5. コラム:その他の関連するテーマ
    1. 【製造技術編】素材だけでなく、金具や縫製の耐久性も無視できない
    2. 【公害編】本革の製造工程には、劣悪な労働環境による健康被害の問題があることも
    3. 【労働問題編】業界全体では、職人の労働条件の悪さも 賃金編
    4. 【イノベーション編】畜産業の環境負荷を下げることも模索されている

  6. 結論

 

1. 基本知識

まずは大前提として、以下の内容を整理したいと思います。

「そもそもレザー素材にはどんな種類のものがあるのか?」

「(主に環境問題の観点から)そもそも何が問題なのか?」

 

順に、解説していきます!

 

1-1. 世の中にあるレザーの種類

皆さんが普段手に取るレザーには、「何を原料にして作られているか」という観点から分けると、①本革、②人工皮革・合成皮革、③植物由来レザー、の3種類があります。

大まかにまとめると、それぞれ下記の原料から作られています。

レザーの種類比較表

ではこれらの素材を比較したときに、どれが一番環境に良いのでしょうか?

実は、この問いに答えるためには、環境問題の全体像を見渡して、問題の本質を捉える必要があります

素材の特徴だけを見て判断してしまうと誤解に繋がりますので、まずは環境問題そのものについて、できるだけわかりやすく解説します。

 

1-2. 環境問題を一言で表すと、人類による「地球資源の使いすぎ」

そもそも環境問題とは、自然環境にまつわる「あらゆる問題」を含みます。

その原因には多様なものがありますが、最もわかりやすくシンプルなものを引用すると、下記の通りです。

“こうした環境の悪化の大きな原因となっているのが、人類による地球の「使いすぎ」です。”

“現在の人類による消費の大きさを計算すると、地球1個分の生産量に対して、1.7個分の利用をしていることがわかります。”

*引用:環境保全団体WWF 公式HP

つまり「地球資源の使いすぎ」が、気候変動や生物多様性の損失といった様々な問題を引き起こしているということですね。

 

1-3. その本質は、多様な問題が相互に関係しあう複雑な状態

では、具体的にはどんな分野でどれぐらい使いすぎているのか?

それを理解するには、「プラネタリーバウンダリー」という考え方が参考になります。

プラネタリーバウンダリーの図

*引用:環境省『環境白書 平成30年』

これは、地球が安定して自然回復力(レジリエンス)を維持するうえで最も重要な9つのシステムについて、それぞれが限界を超えていないかどうかを分析した図です。

最新の状況としては、下記のとおり報告されています。

“2022年時点で、限界もしくは安全域を超えているシステムは「①気候変動」「④生物圏の一体性」「⑤生物地球化学的循環」「⑦土地利用の変化」「⑨ 新規化学物質」の5つ。”

*引用:Ideasforgood公式HP

そしてこの問題の一番難しいところは、各システムが完全に独立して成り立っているわけではなくて、相互に関係しあっているという部分にあります。

 

1-4. レザーは、地球が限界を超えている部分全てに関わっている

ここまで来てやっと、本題に戻ることができます。

この中でレザーが関係するテーマは、どれか?

 

実は「全て」です。

それぞれ、シンプルなものとしては下記の事例が実際に起きています。

  • 気候変動(①)の原因となるCO2を製造工程で排出し、メタンガスを畜産で排出する
  • 放牧地の確保や飼料生産のために森林伐採を行うことで、土地利用を変化(⑦)させ、生物多様性(④)を損なわせる
  • 飼料生産や農産物生産のために用いる化学肥料が海に流出し、生態系への異常(⑤)を引き起こす
  • 本革の製造工程で重金属クロムを用い、生命にとって有害な化学物質(⑨)を流出する。クロムを処理する場合でも、エネルギーを使いCO2を排出する(①)

つまり、レザーは環境問題と切っても切り離せないものであると同時に、その繋がりは多面的かつ複雑であるということです。

だからこそ、それぞれの素材のどこか一側面を切り取って「サステナブルである」「サステナブルでない」と判断することは、誤った評価に繋がりやすい、というわけです。

 

1-5. 一人一人が多様な環境問題を知り、より良い選択をしていく必要がある

世界の人口は今後少なくとも数十年間は増えていくと予測されています。

人口が増えると、衣食住に関わる資源の使用量は増えていきます。

私たちが今の生活を続けることで、環境問題が悪化することは明らかですね。

 

その中でも、UNCTADの報告ではファッション産業は世界で2番目に環境を壊している産業と言われています。

だからこそ、私たちブランドは多様な環境問題に対して、できるだけベターな選択肢を提示するとともに、一人一人の市民がそれを選択していく必要がある、というわけです。

 

2. 本革のサステナビリティ

それでは、ここまでの話を前提に、本革についてのサステナビリティをメリット・デメリット別に検証していきましょう。

 

2-1. メリット

2-1-1. 丁寧に扱えば30年もつポテンシャル

本革は、丁寧に作られたものを、丁寧にお手入れをして使い続ければ、自分の子の世代でも使うことができるのが、一番の強みです。

30年前に製造されたルイヴィトンの製品で保存状態が良いものは、今でもネット上を探すと中古品で流通していますね。

 

2-2. デメリット

2-2-1.水分や擦り傷に弱く、使用可能期間が使い方に依存する

一方で、本革は繊細な素材であることも特徴です。

「雨の日に濡れて放っておいたらカビが生えてしまった」

「カバンに入れていたら傷だらけになってしまった」

 

そんなことも起こり得るのが、デメリットと言えます。

 

2-2-2. 環境負荷が大きすぎる畜産業

近年最も注目されている見方は、本革を生み出している畜産業そのものの環境負荷が大きすぎるという点です。

理由としては、畜産動物を飼育するために放牧地の確保と、飼料(エサ)を生産する土地を確保しなければならないためです。

増大し続ける世界の食肉需要を支えるために、アマゾンの森林が現在進行形で焼き払われているのは有名な話ですね。

 

2-2-3. 畜産業を抜きにしても、高い環境負荷

「本革は畜産業の副産物だから、サステナブルだ」

時にこのような意見を見かけますが、これは本当でしょうか?

 

実は、これはグレーな意見だと私たちは考えています。

動物の「皮膚」はそのままでは腐ってしまうため、加工プロセスが必要です。

そのプロセスで、様々な環境負荷を生み出しているからです。

一般的には、鞣し(なめし)と呼ばれる工程で、皮に対してこのような加工をしています。

  • 塩漬けにして、腐らないように保管する
  • 大量の水を使い、塩や汚れを落とす
  • 薬品漬けにし、不要な毛や皮脂を落とす
  • 重金属クロムなどの鞣し剤を使い、皮を腐らない「革」に変化させる
  • 機械を使い、革の厚みを均等にする
  • 染料や顔料を用いて、色を付ける
  • 型押しやアイロンを用いて、表面の模様や艶出しを行う

動物の体を守る「皮膚」を、私たちが使う「革」に変身させるために、沢山の工程が必要ということですね。

一方で、鞣し剤として重金属を使わない革は市場全体の2割程度は流通していると言われています。

 

そのような革のうち、他の製造工程においても環境負荷に配慮している素材は、比較的ベターな選択肢と言える可能性はあります。

 

3. 人工皮革・合成皮革のサステナビリティ

では次に、人工皮革・合成皮革のサステナビリティをメリット・デメリット別に検証していきましょう。

 

3-1. メリット

3-1-1. 形状が自由自在で素材を無駄なく使える

石油等を原料とする樹脂の一番の良さは、最初から用途に合わせて成形できるため、「余分な加工プロセス」や「裁断後の素材の廃棄」を減らすことができる点です。

本革は元は生き物ですので、どうしても切り取りにくい形になってしまったり、部位によって厚みにバラつきが生じてしまいます。

牛革の全体

*引用:和乃革公式HP

 

3-1-2. 本革と比べると製造工程がシンプルで、CO2排出量は意外と少ない

また、ここまでの説明と重複しますが、

  • 本革の製造工程は意外と複雑である点
  • 余分な加工プロセスを減らすことができる点
  • 裁断後の素材の廃棄を減らすことができる点

を踏まえると、人工皮革・合成皮革は、トータルでのCO2排出量は本革よりも少ないと言われています。

 

3-2. デメリット

3-2-1. 地中に埋まっていた石油(CO2)を、新たに地上に放出してしまう

その一方で、石油資源を原料にしている場合は、地中に固定されていたCO2を地上に放出し、大気のCO2濃度を高めてしまう点が、デメリットと言えます。

 

3-2-2. 最大の問題は、製品寿命が短い傾向にあること

そして、最も大きな問題は、人工皮革・合成皮革の寿命が短く作られる傾向にある、ということです。

みなさんも、合皮の製品を使っていると「1-2年でボロボロと剥がれてしまったり、べたついてきてしまった」といった体験をされたことがあるかもしれません。

 

これは、「加水分解」という名の劣化現象です。

加水分解は、人工皮革・合成皮革が水と反応してどうしても起きてしまう素材の特性ですので、止めることが出来ません。

化学的なイメージ

素材が製造された時から加水分解は始まりますので、通常の製品ですと、一般的には2~3年で製品の寿命を迎えると言われています。

 

ただし現在の技術では、長い期間、加水分解が起きないように製造することは可能です。

主に家具向けの素材として、10年以上持つようなものを提供する企業も存在します。

 

短命な素材は、短い期間で捨てられることを前提に製造されますので、デザインや縫製についても自ずと、短い期間で故障してしまったり、見た目に飽きてしまうようなモノになります。

どれだけサステナブルな素材・製造工程であっても、短い期間で買い換える必要が出てしまうものは自ずと大量生産・大量廃棄に繋がってしまうので、この視点は人工皮革・合成皮革に限らず重要なポイントと言えます。

 

4. 植物由来レザーのサステナビリティ

最後に、植物由来レザーのサステナビリティをメリット・デメリット別に検証していきましょう。

 

4-1. メリット

4-1-1. 植物は生産過程の環境負荷が小さい。そもそも副産物を使うケースも

何と言っても一番大きなポイントは、「植物」を素材に用いている点です。

植物は、畜産や石油と比べて温室効果ガス排出、水資源の使用・汚染、土地の利用面積、生態系への悪影響が少なく、生産工程における環境負荷が全般的に低いのが特徴です。

素材によっては、元々使われていなかった植物資源をアップサイクルしているという側面もあり、そもそも資源の生産エネルギーを要していない場合もあります。

 

4-1-2. 光合成により地表のCO2を回収する効果がある

植物は光合成を行うため、空気中のCO2を吸収し、酸素に変える働きを持ちます。

そのため、素材を作る過程で植物資源をより多く利用していくことで、空気中の温室効果ガスの濃度を低下させる働きを期待できます。

 

4-1-3. 農法によっては、土壌の回復効果がある

近年、「リジェネラティブ農法」という、自然環境をより良い状態に回復させていくことをテーマにした農法が提唱されています。

リジェネラティブ農法とは、土壌中の有機物や微生物の多様性を確保することで、土地の健全性を高め、より「再生産できる(=リジェネラティブ)」状態を実現していく農法です。

植物をレザーの原料とする場合、このような形での環境問題解決への貢献を果たすことができ、実際に一部の植物由来レザーメーカーでは実践されています。

 

4-2. デメリット

4-2-1. 新しい素材であり、公開されている情報が少ない

植物由来レザーが市場に出回り始めたのは2019-2020年頃です。

現在でも新たな素材が日々生まれており、なおかつ既存の植物由来レザーも「より耐久性を高く」「より植物由来の割合を高く」するための研究開発を行っております。

よって、信頼性のある情報源からのタイムリーな情報発信が(特に日本語だと)少なく、いざ買おうとしたときに誤った情報を元にしてしまう可能性があります。

 

4-2-2. 耐久性が素材によって異なる

植物由来レザーと一口に言っても、メーカーの方針によって、長く使うことができるものと、そうでないものがあります。

これらのポイントを踏まえて、確認すべき情報が公開されていないブランドについては、直接ブランドのお問合せ先に質問をしてみるのが良いでしょう。

 

5. コラム:その他の関連するテーマ

ここまではレザー自体のサステナビリティについて解説してきましたが、それ以外にも製品を選ぶ上で、できれば確認すべきポイントをご紹介します。

 

5-1. 【製造全体編】素材だけでなく、金具や縫製の耐久性も無視できない

レザーは、あくまで「製品の素材の一部」です。

その他にも、金具や糸、裏地といった素材があり、そしてそれを製品として作り上げる職人の技術があります。

それら全てが、必要な耐久性を実現する上で十分な水準になっているかどうか、が本来確認すべき点です。

 

5-2. 【公害編】本革の製造工程には、劣悪な労働環境による健康被害の問題があることも

本革の製造工程では化学薬品を用いていることをご紹介しました。

途上国など工場廃棄物の法整備が整っていない地域では、これにより現場や周辺地域の人々の健康被害が生み出されている点は深刻な問題です。

クロム公害により発生した労働者の健康被害

*引用:映画『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~』

日本では法整備が整っているため、エネルギーを用いて処理を行い、環境負荷に転嫁していますが、まだまだ世界にはこのような地域も存在しています。

 

5-3. 【労働問題編】業界全体では、職人の労働条件の悪さも

サステナビリティという観点では、革職人の賃金の低さも挙げられます。

その理由は、大きく分けて下記の2点です。

  • 物価の低い途上国との価格競争になりやすいため
  • 技能が向上したとしても、製品の価格が比例して向上するわけではないため

だからと言って、消費者が価格が低いものばかりを選択しているとどうなるか。

長い目で見ると、まずは自国内で製造できる技能が失われ、次に製造を依存する国の物価上昇に製品価格が依存するようになり、最後には自国以外で生産された製品に高い賃金を支払うことになります。

また短期的な視点でも、製品の修理を担える技術が国内から失われることになります。

修理をするために国外に製品を輸送していては、不用意に環境負荷を生み出すことにもつながります。

 

5-4. 【イノベーション編】畜産業の環境負荷を下げることも模索されている

最後に、かなり不確実性は高いですが、より幅広い目線のコラムも追加します。

市場環境は、新たなテクノロジーの登場により、日々変わります。

例えば、海外のベンチャーには、生産効率の良い植物を用いて飼料の生産工程で発生するCO2を減らすことで、畜産業全体の環境負荷を下げることを目指す企業も存在します。

だからと言って、世界人口が増え続けるこの状況で畜産業全体の環境負荷が十分に下がる未来が到達する可能性があるかというと、今の食生活のままでは難しいことは明らかです。

ですが、ここまでのまとめとして、問題はいたるところにありますし、それすらも日々変わり得る、というのがポイントだと考えています。

地球全体を見たときに、どれか一つの策だけが絶対的に正しい答えではない

最終的には、一人一人がこのような考え方に少しでも理解を持ち、常に新しいアイデアを受け入れ、発展していく文化が必要と考えています。

 

結論

  • 素材だけを見て、「サステナブルかどうか」と言いきることはできない
  • 想定する使用年数に対して、素材の寿命が短い場合や、丁寧に製造されていない場合は、どんな素材を使っていたとしてもサステナブルとは言えない

  • とは言え、植物由来のレザー製品は素材そのものの環境負荷が一番小さく、「多くの場合は」サステナブルな選択と言える
  • 本革は、素材の生産背景や製造工程の丁寧さが確認できるもので、まめにお手入れができる場合はサステナブルな選択肢になり得る
  • 人工皮革・合成皮革は素材の寿命にばらつきがありすぎるため、自分が想定する使用年数程度には使用できることを、口コミ等で確認できる場合はサステナブルな選択肢になり得る

  • それでも迷う場合は、未来への投票として、自分が共感できるブランドを選ぶ

 

いかがだったでしょうか?

最新の素材も多く、なかなかまとまった情報がない分野ですので、この記事を読んで少しでもみなさんのお力になれれば幸いです。

他に知りたい事があれば、ぜひSNSのDM等でメッセージ下さいね。



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